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サイトトップ/日没する国のエラーコラム~山海経の謎を解く(第百九十七回~第二百二回)

日没する国のエラーコラム 山海経の謎を解く

【 第百九十七回 ~ 第二百二回】

 筆者は、山海経の成り立ちが日本神話のそれと類似性があるのではないかと疑っています。山海経は戦国から漢代に成立した最古の地理書で、その荒唐無稽な内容から奇書扱いされています。一方の日本神話も決して事実とは言えない絵空事が満載で、その出所の多くは先住民の縄文語(アイヌ語)地名の漢字表記にこじつけられた創作物語です。

 第九十三回~第百九十六回でご紹介したとおり、中国漢代の県名の多くは、一部殷墟周辺を除き、縄文語(アイヌ語)解釈可能です。このことは、中原から蔑まれた四夷こそが実は中国先住民で、反対に殷が侵略者であったことを示しています。 数年前、雲南地方の少数民族であるイ族が日本語の一部を理解できるとの記事が中国の百度(ポータルサイト)に掲載されたことがありますが、それも、縄文語由来の単語であれば、まったく不思議なことではありません。

 山海経は、五蔵山経、海外四経、海内四経、大荒四経、海内経から構成されています。そのうち五蔵山経の西山首経の山岳、海内四経の地名の比定地が一部判明していますので、本稿ではこれらを縄文語解釈していきます。

 山海経に登場する奇々怪々な妖怪たちが、周辺の漢代の県名(上古音)の縄文語解釈やその地勢と見事に一致する様を是非ご覧ください。
 山海経の妖怪も日本の神々と同じく、先住民の言語である縄文語(アイヌ語)の地名に漢字を充てたことにより生み出された創作物語が起源でした。

 日本に関係の深い「倭」関連の記載内容(海内北経)、その他海内四経、西山首経の山岳の順番でご紹介します。


【上古音凡例】
・上古音: 高本漢系統/王力系統/董同龢系統/周法高系統/李方桂系統
※それぞれ「聲母」「半角スペース」「韻母」と配置  ※該当する説が存在しないものには「-」を表記

〈参考〉漢字古今音資料庫(https://xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/ccr/)

日没する国のエラーコラム
第百九十七回「山海経の謎を解く!妖怪は日本の神々と同源、縄文語地名に漢字を充てて創作された!~特別編:海内北経の倭国について~」
 海内北経には「倭」についての記載があります。ここでは特別編として、「倭」周辺で語られる内容について縄文語(アイヌ語)解釈していきます。残りの海内北経は第二百回をご参照ください。
 この「倭」についての記載内容がいわゆる「倭国=日本」と辻褄が合わないので解読が難しくなっています。

 まずは、山海経訳と縄文語解釈。


■■■ 蓋国 ■■■
◇山海経訳「蓋国鉅燕の南、の北にあり。は燕に属す」
※「鉅燕」は「強大な燕」の意とも。

◎縄文語:蓋=「カィ」=「折れ波」=海際
・上古音:「蓋」k ɑb/k at/k ɑd, k  ɑb/k ar/k abh
・上古音:「蓋」ɡʰ ɑp/ɣ ap/- -/ɡ ap/- -

◎縄文語:鉅燕=「キ・ヤー」=「山の・陸岸」
・上古音:「鉅」ɡʰ i̯o/- -/ɡʰ jaɡ/ɡ jaɣ/g jagx
・上古音:「燕」ʔ ian/0 ian/ʔ iæn/ʔ ean/· ianh

縄文語:薊=「キ」=「山」 ※燕の首都
・上古音:「薊」- -/k iat/k iæd/k ear/k iadh

◎縄文語:倭=「ワ」=「岸」
・上古音:「倭」ʔ i̯wăr/0 ǐwəi/ʔ juər/ʔ iwə/·w jər
・上古音:「倭」- -/0 uəi/ʔ uə̂r/ʔ wə/·w ər

・比定地:燕の南。倭の北。渤海湾西岸から北岸。

  渤海湾西岸、北岸が燕ですから、海辺の表現が多くなります。
 「倭=倭国=日本」と解釈するとまったく理解不能になりますが、海際で「倭=岸」と呼ばれた地名あるいは人々があったということです。
 同一地勢の同名は日本でも頻繁に登場しますので、まったく問題ありません。例えば「豊(国、中、橋ほか)=トヤ=海岸」、「越、伊豆、糸(島)、出(雲)=エテュ=岬」や、「阿波、安房、淡(路)=アゥ・ワ=隣の・陸岸」などです。※地名の「豊」の多くは「豊か」の意ではありません。「越」は「コシ」の読みとは限りません。

 「倭人」が縄文語解釈どおり「岸辺に住む人」の意で呼ばれていたとするならば、その活動域が中国大陸東岸、朝鮮半島南岸、日本全域に広がっていたとも捉えられます。漢代の県名を見るに、少なくとも東夷、南蛮の人々は縄文語(アイヌ語)を共有していた可能性が高いので、彼らが海沿いに日本に渡ってきて弥生人になるのは極めて自然な流れです。

 また、燕の首都の「薊城」は現在の北京市房山区となります。この周辺の北京市西部に置かれた漢代の県名はことごとく「海辺の山」を表現していて、「鉅燕=キ・ヤー=山の・陸岸」「薊=キ=山」と一致しています。紀元前602年の海岸線はこの周辺でした。

【北京市西部の漢代の県名の解釈】
●縄文語:陰郷(県)=「ヤン・シ」=「陸岸の・山」
・上古音:「陰」ʔ i̯əm/0 ǐəm/ʔ jəm/ʔ iəm/· jəm
・上古音:「鄉」x i̯aŋ/h ǐaŋ/x jaŋ/x jaŋ/h jang

●縄文語:陽郷(県)=「ヤン・シ」=「陸岸の・山」
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang
・上古音:「鄉」x i̯aŋ/h ǐaŋ/x jaŋ/x jaŋ/h jang

●縄文語:利郷(県)=「ラン・シ」=「上から下に下る・山」
・上古音:「利」l i̯əd/l ǐei/l jed/l ier/l jidh
・上古音:「鄉」x i̯aŋ/h ǐaŋ/x jaŋ/x jaŋ/h jang

●縄文語:臨郷(県)=「ラン・シ」=「上から下に下る・山」
・上古音:「臨」bl i̯əm/l ǐəm/l jəm/l iəm/bl jəmh
・上古音:「鄉」x i̯aŋ/h ǐaŋ/x jaŋ/x jaŋ/h jang

●縄文語:良郷(県)=「ラン・シ」=「上から下に下る・山」
・上古音:「良」l i̯aŋ/l ǐaŋ/l jaŋ/l iaŋ/l jang
・上古音:「鄉」x i̯aŋ/h ǐaŋ/x jaŋ/x jaŋ/h jang

●縄文語:西郷(県)=「シ・シ」=「大きな・山」
・上古音:「西」s iər/s iei/s ied/s er/s id
・上古音:「鄉」x i̯aŋ/h ǐaŋ/x jaŋ/x jaŋ/h jang

▼北京市周辺(漢代の県名の縄文語解釈)
 

▼北京市房山区(薊城遺蹟)



 山海経に戻ります。
 「倭」に続いて「朝鮮」の記載があります。「朝鮮」はいわゆる「倭国」の北方ですが、山海経には「倭の北に朝鮮がある」とも、また「朝鮮の南に倭がある」とも書かれていません。ただ「列陽の東の海、北山の南」とだけ書かれています。
 列陽は「朝鮮の西」に位置し、「燕」に属していますから、縄文語解釈も勘案すると、遼西、遼東の可能性があります。遼東半島南端の大連の解釈とも辻褄が合います。


■■■ 朝鮮 ■■■
◇山海経訳「朝鮮列陽の東の海、北山の南にあり。列陽は燕に属す」

◎縄文語:朝鮮=「トー・サン」=「海の・出崎」
・上古音:「朝」t i̯oɡ/t ǐau/t jɔɡ/t iaw/t rjagw
・上古音:「朝」dʰ i̯oɡ/d ǐau/dʰ jɔɡ/d iaw/d rjagw
・上古音:「鮮」s i̯an/s ǐan/s jæn/s jian/s jan

◎縄文語:列陽=「ラッ・ヤー」=「下がっている・陸岸」
・上古音:「列」l i̯at/l ǐat/l jæt/l iat/l jat
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang

◎縄文語:北山
=「パケ・サン」=「岬の・出崎」
or「パンケ・サン」=「川下の・出崎」

・上古音:「北」p ək/p ək/p uə̂k/p wək/p ək
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian

 遼東半島に関連する解釈。「低地」「出崎」の解釈で地勢と一致、「列陽」の解釈とも辻褄が合います。

●縄文語:遼=「ラー」=「低いところ」
・上古音:「遼」l ioɡ/l iau/l iɔɡ/l eaw/l iagw 

●縄文語:大連=「タン・ラー」=「こちらの・低いところ」
・上古音:「大」tʰ ɑd, dʰ ɑd/d at/dʰ ɑd/d ar/d adh
・上古音:「連」l i̯an/l ǐan/l jæn/l ian/l jan

 大連の魏晋時代の名称である「三山」も地勢と一致します。

●縄文語:三山=「サ・サン」=「隣の・出崎」
・上古音:「三」s əm/s əm/s ə̂m/s əm/s əm
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian


 山海経では次に「列姑射」「姑射国」の記載があります。倭や朝鮮との関係性は不明ですが、「窪地」「低地」の縄文語解釈を参考にすると、これも遼東半島南端の大連付近と捉えられます。地勢がピタリと一致しています。
 また、そこに生息すると思われる妖怪、生き物たちも「低地」「湿地」関連で解釈でき、大連周辺の地勢を表現していると捉えられます。
 ここに登場する蓬莱山は一般的に「海の中の仙境」とされていますが、縄文語解釈ではただの「川下の低地」です。縄文語を理解できない人々が漢字を充てて物語を創作しただけです。


■■■ 列姑射、姑射国 ■■■
◇山海経訳「列姑射は海の島の中にあり。姑射国は海中にあり、列姑射に属し、西南には山をめぐらす」

◎縄文語:列姑射=「ラッ・コッ・ヤー」=「下がっている・窪地の・岸」
◎縄文語:姑射=「コッ・ヤー」=「窪地の・岸」
・上古音:「列」l i̯at/l ǐat/l jæt/l iat/l jat
・上古音:「姑」k o/k a/k ɑɡ/k aɣ/k ag
・上古音:「射」- -/- -/d jăɡ/r aɣ/g rjiagh



■■■ 陵魚、鯾、明組邑、蓬莱山、大人之市 ■■■
◇山海経訳「陵魚は人面で手足あり、魚の身。海中にあり。大きなは海中に住む。明組邑は海中にあり。蓬莱山は海中にあり。大人之市は海中にあり」

◎縄文語:陵魚=「ラー・カ」=「低いところの・ほとり、岸」
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng
・上古音:「魚」ŋ i̯o/ŋ ǐa/ŋ jaɡ/ŋ jaɣ/ng jag

◎縄文語:鯾=「パン」=「川下」
・上古音:「鯾」 - -/- -/p juæn/p jiwan/p jian

◎縄文語:明組=「メ・チャ」=「泉の・岸」
・上古音:「明」m i̯ăŋ/m iaŋ/m juăŋ/m iwaŋ/m jiang
・上古音:「組」ts o/ts a/ts ɑɡ/ts aɣ/ts agx

◎縄文語:蓬莱=「パン・ラー」=「川下の・低いところ」
・上古音:「蓬」bʰ uŋ/b ɔŋ/bʰ ûŋ/b ewŋ/b ung
・上古音:「萊」l əɡ/l ə/l ə̂ɡ/l əɣ/l əgh

◎縄文語:大人之市=「ティネィ・テューテュ」=「湿地の・出崎」
・上古音:「大」tʰ ɑd, dʰ ɑd/d at/dʰ ɑd/d ar/d adh
・上古音:「人」ȵ i̯ĕn/ȵ ǐen/ȵ jen/n jien/n jin
・上古音:「之」ȶ i̯əɡ/ȶ ǐə/ȶ jəɡ/t jiəɣ/t jəg
・上古音:「市」ȡ i̯əɡ/ʑ ǐə/ʑ jəɡ/d jiəɣ/d jəgx


▼渤海湾



日没する国のエラーコラム
第百九十八回「山海経の謎を解く!妖怪は日本の神々と同源、縄文語地名に漢字を充てて創作された!~海内南経~」
 今回は海内南経を縄文語解釈します。

■■■  ■■■
◇山海経訳「は海中にあり、閩も海中にあり、その西北に山がある」

◎縄文語:甌=「オ」=「尻、川尻」
・上古音:「甌」- -/ʔ u/0 ɔ/ʔ ûɡ/ʔ ew/· ug
・比定地:浙江省周辺

▼甌の比定地の浙江省



■■■  ■■■
◇山海経訳「甌は海中にあり、も海中にあり、その西北に山がある」

◎縄文語:閩=「メ」=「泉」
・上古音:「閩」m i̯ən/m ǐen/m juən/m iwən/m jiən
・比定地:福建省周辺

▼閩の比定地の福建省



■■■ 鄣山 ■■■
◇山海経訳「三天子鄣山は閩の西北にあり」

◎縄文語:鄣山=「タン・サン」=「こちらの・出崎」
・上古音:「閩」ȶ i̯aŋ/ȶ ǐaŋ/ȶ jaŋ/t jaŋ/t jang
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian
・比定地:福建省の西北

▼鄣山の比定地の福建省



■■■ 番隅 ■■■
◇山海経訳「桂林八樹は番隅の東にあり」

◎縄文語:番隅=「パン・キ」=「川下の・山」
・上古音:「番」pʰ i̯wăn/pʰ ǐwan/pʰ juăn/pʰ jwan/ph jan
・上古音:「番」- -/pʰ uan/pʰ uɑn/pʰ wan/ph an
・上古音:「番」p wɑr/p uai/- -/p wa/- -
・上古音:「番」- -/p uai/p uɑ/p wa/p arh
・上古音:「隅」ŋ i̯u/- -/ŋ juɡ/ŋ jew/ng jug
・比定地:広東省広州市番禺区。漢代の(南海郡)番禺県。

 番禺区は解釈どおり、「川下の丘陵地帯」です。

▼番禺区大夫山森林公園

▼番禺県の比定地の広東省広州市番禺区



■■■ 伯慮国・離耳国・雕題国・北胊国 ■■■
◇山海経訳「伯慮国・離耳国・彫題国・北胊国はみな鬱水の南にあり、鬱水は湘陵の南海(山)より流れる」

◎縄文語:伯慮=「パケ・ラー」=「岬の・低いところ」
・上古音:「伯」p ăk/p eak/p uăk/p rwak/p rak
・上古音:「慮」l i̯o/l ǐa/l jaɡ/l iaɣ/l jagh

◎縄文語:離耳=「ラン・イ」=「上から下に下がる・ところ」
・上古音:「離」l ia/l ǐai/l ja/l ia/l jiarh
・上古音:「耳」ȵ i̯əɡ/ȵ ǐə/ȵ jəɡ/n jiəɣ/n jəgx

◎縄文語:彫題=「テューテュ」=「出崎」
・上古音:「雕」t -/t iu/t ioɡ/t eəw/t iəgw
・上古音:「題」dʰ ieɡ/d ie/dʰ ieɡ/d eɣ/d ig

◎縄文語:北胊=「パケ・カ」=「岬・のほとり」
・上古音:「北」p ək/p ək/p uə̂k/p wək/p ək
・上古音:「胊」ɡʰ i̯u/- -/ɡʰ juɡ/ɡ jew/g jug

◎縄文語:鬱=「エテュ」=「岬」
・上古音:「鬱」ʔ i̯wət/0 ǐwət/ʔ juə̆t/ʔ jwət/·w jət

◎縄文語:百越
=「パンケ・エテュ」=「川下の・岬」
or「パケ・エテュ」=「岬・岬」
・上古音:「百」p ăk/p eak/p uăk/p rwak/p rak
・上古音:「越」ɡ i̯wăt/ɣ ǐwat/ɣ juăt/ɣ jwat/gw jat

・比定地:古代百越の地。鬱水は今の江西省西江。広東省南部。

 すべて「岬の低いところ」の解釈で一致しています。

▼百越の比定地の広東省 ※西江の河口がマカオ



■■■  ■■■
◇山海経訳「は舜葬の東、湘水の南にあり、その状は丑の如く蒼黒くて一角」

◎縄文語:兕=「チゥ」=「水流、水脈」
・上古音:「兕」dz i̯ər/z ǐei/z jed/r jier/r jidx
・比定地:舜葬(九嶷山)の東。

▼九嶷山

▼九嶷山周辺(漢代の県名の縄文語解釈)




■■■ 蒼梧 ■■■
◇山海経訳「蒼梧の山は帝・舜を山の南に葬り、帝・丹朱をその北に葬る」

◎縄文語:蒼梧=「タン・コッ」=「こちらの・窪地、谷」
・上古音:「蒼」tsʰ ɑŋ/tsʰ aŋ/tsʰ ɑŋ/tsʰ aŋ/tsh ang
・上古音:「梧」ŋ o/ŋ a/ŋ ɑɡ/ŋ aɣ/ng ag
・比定地:舜葬(九嶷山)。

▼九嶷山



■■■ 汜林 ■■■
◇山海経訳「汜林は方三百里、狌狌の東にあり。狌狌は人の名を知る。この獣は豕(いのこ)のようで人面、舜葬の西にあり」

◎縄文語:汜林=「チゥ・ラー」=「水流、水脈の・低いところ」
・上古音:「汜」dz i̯əɡ/z ǐə/z jəɡ/r jiəɣ/r jəgx
・上古音:「林」ɡl i̯əm/l ǐəm/l jəm/l iəm/gl jəm

◎縄文語:狌狌=「シアン・シ」=「大きな・山」
・上古音:「猩」s ĕŋ/ʃ eŋ/s ĕŋ/s reŋ/s ring
・上古音:「猩」s ieŋ/s ieŋ/s ieŋ/s eŋ/s ing

・比定地:舜葬(九嶷山)の西。

 九嶷山の北方に漢代の泉陵県(比定地:湖南省永州市零陵区)、北西に洮陽県(比定地:広西チワン族自治区桂林市全州県)があります。
 この一帯は「水辺」「低地」の解釈で一致しています。湘江流域です。

●縄文語:泉陵(県)=「チゥ・ラー」=「水脈、水流の・低いところ」
・上古音:「泉」dzʰ i̯wan/d ǐwan/dzʰ juæn/dz jiwan/dz juan
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng

●縄文語:洮陽(県)=「チゥ・ヤー」=「水流、水脈の・陸岸」
・上古音:「洮」dzʰ i̯wan/d ǐwan/dzʰ juæn/dz jiwan/dz juan
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang

▼洮陽県、零陵県の比定地の広西チワン族自治区桂林市全州県



■■■ 犀牛 ■■■
◇山海経訳「狌狌の西北に犀牛があり、その状は牛の如くで黒い」

◎縄文語:犀牛=「シアン・キ」=「大きな・山」
・上古音:「犀」s iər/s iei/s ied/s er/st id
・上古音:「牛」ŋ i̯ŭɡ/ŋ ǐwə/ŋ juə̆ɡ/ŋ jwəɣ/ng jəg
・比定地:狌狌(九嶷山の西)の西北。

 九嶷山の西北西には大きな山塊があります。隣接する「狌狌」の解釈とも「大きな山」の意で一致しています。

◎縄文語:狌狌=「シアン・シ」=「大きな・山」



■■■ 窫窳 ■■■
◇山海経訳「窫窳は龍の首で弱水の中に住む。狌狌人名を知るの西にあり、その状は龍の首の如くで人を食う」

◎縄文語:窫窳=「ヤチ・ヤー」=「泥の・陸岸」
・上古音:「㝣」- -/- -/ʔ iæt/ʔ eat/· iat
・上古音:「窳」- -/ʎ ǐwa/ɡ juaɡ/ɣr iwaɣ/gw rjagx
・比定地:狌狌(九嶷山の西)の西。

 九嶷山の北方に漢代の泉陵県(比定地:湖南省永州市零陵区)、西北西に洮陽県(比定地:広西チワン族自治区桂林市全州県)、零陵県(同上)があります。
 この妖怪も単なる「水辺」「湿地」「低地」の意です。湘江流域です。

●縄文語:泉陵(県)=「チゥ・ラー」=「水脈、水流の・低いところ」
・上古音:「泉」dzʰ i̯wan/d ǐwan/dzʰ juæn/dz jiwan/dz juan
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng

●縄文語:洮陽(県)=「チゥ・ヤー」=「水流、水脈の・陸岸」
・上古音:「洮」dzʰ i̯wan/d ǐwan/dzʰ juæn/dz jiwan/dz juan
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang

●縄文語:零陵(県)=「レ・ラー」=「山陰、山の向こうの・低いところ」
・上古音:「零」l ieŋ/l ieŋ/l ieŋ/l eŋ/l ing
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng

▼洮陽県、零陵県の比定地の広西チワン族自治区桂林市全州県



■■■ 建木 ■■■
◇山海経訳「木がある。その状は牛の如く、それを引けば皮がむけて纓(かんむりのひも)の如く、また黄蛇のよう。その歯は羅(うすぎぬ)の如く、その実は欒(おうち)の如く、その木は蓲(はりにれ)のよう、その名は建木。窫窳の西、弱水のほとりにあり」

◎縄文語:建木=「キ・マ」=「山の・奥」
・上古音:「建」k i̯ăn/k ǐan/k jăn/k jan/k janh
・上古音:「木」m uk/m ɔk/m ûk/m ewk/m uk
・比定地:狌狌(九嶷山の西)の西方。窫窳の西。

 九嶷山の西北西に漢代の零陵県(比定地:桂林市全州県)があります。「山向こう」の解釈で一致しています。

●縄文語:零陵(県)=「レ・ラー」=「山陰、山の向こうの・低いところ」
・上古音:「零」l ieŋ/l ieŋ/l ieŋ/l eŋ/l ing
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng

▼洮陽県、零陵県の比定地の広西チワン族自治区桂林市全州県



■■■ 氐人国 ■■■
◇山海経訳「氐人国は建木の西にあり、その人となり、人面で魚の身、足がない」

◎縄文語:氐人=「ティネイ」=「湿地」
・上古音:「氐」- -/t ǐei/t jed/t ier/t rjid
・上古音:「氐」t iər/t iei/t ied/t er/t id
・上古音:「人」ȵ i̯ĕn/ȵ ǐen/ȵ jen/n jien/n jin
・比定地:狌狌(九嶷山の西)の西方。窫窳の西方。建木の西。

 九嶷山の北方に漢代の泉陵県(比定地:湖南省永州市零陵区)、西北西に洮陽県(比定地:広西チワン族自治区桂林市全州県)、零陵県(同上)があります。
 この妖怪の国も「水辺」「湿地」「低地」の意で一致しています。湘江流域です。

●縄文語:泉陵(県)=「チゥ・ラー」=「水脈、水流の・低いところ」
・上古音:「泉」dzʰ i̯wan/d ǐwan/dzʰ juæn/dz jiwan/dz juan
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng

●縄文語:洮陽(県)=「チゥ・ヤー」=「水流、水脈の・陸岸」
・上古音:「洮」dzʰ i̯wan/d ǐwan/dzʰ juæn/dz jiwan/dz juan
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang

●縄文語:零陵(県)=「レ・ラー」=「山陰、山の向こうの・低いところ」
・上古音:「零」l ieŋ/l ieŋ/l ieŋ/l eŋ/l ing
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng

▼洮陽県、零陵県の比定地の広西チワン族自治区桂林市全州県



■■■ 巴蛇 ■■■
◇山海経訳「巴蛇は象を食い、三年にしてその骨を排出した。君子がこれを服用すれば心腹の病なし。その蛇は青・黄・赤・黒。犀牛の西にあり」

◎縄文語:巴蛇=「ペン・チゥ」=「川上の・水流、水脈」
・上古音:「巴」p ɔ/p ea/p uăɡ/p rwaɣ/p rag
・上古音:「蛇」d ia/ʎ ǐai/d ja/r ia/r ar
・上古音:「蛇」- -/- -/tʰ ɑ/tʰ a/th ar
・上古音:「蛇」ʰ ia/ȡ iai/- -/- -/d jar
・比定地:犀牛(狌狌[九嶷山の西]の西北)の西

 九嶷山の北方に漢代の夫彝県(比定地:湖南省邵陽市新寧県)があります。
 この妖怪は単に「川上」の意です。

●縄文語:夫彝(県)=「ペン・ヤー」=「川上の・陸岸」
・上古音:「夫」bʰ i̯wo/b ǐwa/bʰ juaɡ/b jwaɣ/b jag
・上古音:「夫」p i̯wo/p ǐwa/p juaɡ/p jwaɣ/p jag
・上古音:「彝」- -/ʎ ǐei/d jed/r ier/r id

▼夫彝県(比定地:湖南省邵陽市新寧県)



■■■ 旄馬 ■■■
◇山海経訳「旄馬、その状は馬の如く、四つの膝に毛あり、巴蛇の西北、高山の南にあり」

◎縄文語:巴蛇=「モ・メ」=「小さな・泉」
・上古音:「旄」m oɡ/m au/m ɔ̂ɡ/m aw/m agw

・上古音:「馬」m ɔ/m ea/m uăɡ/m rwaɣ/m ragx
・比定地:九嶷山の西北方

 九嶷山の北方に巴蛇に比定した漢代の夫彝県(比定地:湖南省邵陽市新寧県)、その西北に都梁県(比定地:湖南省邵陽市武岡市)があります。
 都梁県の解釈とも地勢とも「小さな泉」「水たまり」で一致しています。

●縄文語:都梁(県)=「トラィ」=「水たまり」
※原義「トー・ラィ・イ」=「湖沼の・死んだ・もの」
・上古音:「都」t o/t a/t ɑɡ/t aɣ/t ag
・上古音:「梁」l i̯aŋ/l ǐaŋ/l jaŋ/l iaŋ/l jang

▼都梁県の比定地の湖南省邵陽市武岡市




日没する国のエラーコラム
第百九十九回「山海経の謎を解く!妖怪は日本の神々と同源、縄文語地名に漢字を充てて創作された!~海内西経~」
 今回は海内西経を縄文語解釈します。

■■■ 疏属山 ■■■
◇山海経訳「弐負の臣を危といい、危と弐負は窫窳(あつゆ)を殺した。そこで帝は(窫窳を)疏属山にしばりつけた。その右足に桎(あしかせ)をし、両手と髪を後ろでしばり、これを頂上の木につないだ。開題の西北にあり」

◎縄文語:疏属=「シ・テュ」=「実に・小山」
・上古音:「疏」ʂ i̯o/ʃ ǐa/s aɡ/s iaɣ/s rjag
・上古音:「屬」ȶ i̯uk/ȶ ǐwɔk/ȶ juk/t jewk/t juk
・比定地:陝西省楡林市綏徳県疏属山。

◎縄文語:開題=「カン・テュ」=「上にある・小山」
・上古音:「開」kʰ ər/kʰ əi/kʰ ə̂d/kʰ ər/kh əd
・上古音:「題」dʰ ieɡ/d ie/dʰ ieɡ/d eɣ/d ig

 疏属山は「高所の谷にある小山」です。開題は疏属山の別名ともとれます。

⇒疏属山(google画像検索)

▼疏属山



■■■ 大沢 ■■■
◇山海経訳「大沢は方百里、群鳥の生まれるところ、また羽の毛がえするところ。鴈門の北にあり」

◎縄文語:大沢=「タン・トー・ケ」=「こちらの・湖沼・のところ」
・上古音:「大」tʰ ɑd, dʰ ɑd/d at/dʰ ɑd/d ar/d adh
・上古音:「澤」dʰ ăk/d eak/dʰ ăk/d rak/d rak
・比定地:山西省代県雁門山(別名勾注山)の北。

 雁門山の北には漢代の汪陶県(比定地:山西省朔州市応県西部)、その東に劇陽県(比定地:山西省朔州市応県北東部)があります。
 「湖沼」「湖畔」の意で一致しています。

●縄文語:汪陶(県)=「ウェン・トー」=「難所の・湖沼」
・上古音:「汪」ʔ wɑŋ/0 uaŋ/ʔ juaŋ/ʔ jwaŋ/·w jang
・上古音:「陶」d -/ʎ ǐu/- -/- -/r iaw
・上古音:「陶」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgw

●縄文語:劇陽(県)=「キケ・ヤー」=「山の・陸岸」
・上古音:「劇」ɡʰ i̯ăk/g iak/ɡʰ jăk/ɡ iak/g jiak
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang

▼山西省朔州市応県



■■■ 鴈門山 ■■■
◇山海経訳「鴈門山、鴈がこのあたりから現れる。高柳の北にあり。高柳は代の北にあり」

◎縄文語:鴈門=「カン・メ」=「上にある・泉」
・上古音:「鴈」ŋ an/ŋ ean/ŋ an/ŋ ran/ng ranh
・上古音:「門」m wən/m uən/m uə̂n/m wən/m ən
・比定地:山西省代県雁門山(別名勾注山)。

◎縄文語:高柳=「カン・ラー」=「上にある・低いところ」
・上古音:「高」k oɡ/k au/k ɔ̂ɡ/k aw/k agw
・上古音:「柳」l -/l ǐu/l jŏɡ/l iəw/l jəgwx

 代県には漢代に広武県(比定地:山西省忻州市代県)、その西には原平県(比定地:同上)が置かれています。
 「高所にある泉、低地」の解釈で一致しています。

●縄文語:広武(県)=「カン・メ」=「上にある・泉」
・上古音:「廣」k wɑŋ/k uaŋ/k uɑŋ/k waŋ/kw angx
・上古音:「武」m i̯wo/m ǐwa/m juaɡ/m jwaɣ/m jagx

●縄文語:原平(県)=「カン・ぺ」=「上にある・水」
・上古音:「原」ŋ i̯wăn/ŋ ǐwan/ŋ juăn/ŋ jwan/ngw jan
・上古音:「平」bʰ i̯ĕŋ/b ǐeŋ/bʰ jĕŋ/b ieŋ/b jing

▼山西省忻州市代県

▼山西省忻州市代県周辺(漢代の県名の縄文語解釈)




■■■ 東胡、大沢 ■■■
◇山海経訳「東胡大沢の東にあり」

◎縄文語:東胡=「タン・コッ」=「こちらの・窪地、谷」
・上古音:「東」t uŋ/t ɔŋ/t ûŋ/t ewŋ/t ung
・上古音:「胡」ɡʰ o/ɣ a/ɣ ɑɡ/ɡ aɣ/g ag
・比定地:大沢(山西省代県雁門山の北)の東。

◎縄文語:大沢=「タン・トー・ケ」=「こちらの・湖沼・のところ」
・上古音:「大」tʰ ɑd, dʰ ɑd/d at/dʰ ɑd/d ar/d adh
・上古音:「澤」dʰ ăk/d eak/dʰ ăk/d rak/d rak

 東胡と大沢は「窪地、湖沼」の意でほぼ同義です。



■■■ 夷人 ■■■
◇山海経訳「夷人は東胡の東にあり」

◎縄文語:夷人=「ヤン・ニー」=「陸岸の・森」
・上古音:「夷」d i̯ər/ʎ ǐei/d jed/r ier/r id
・上古音:「人」ȵ i̯ĕn/ȵ ǐen/ȵ jen/n jien/n jin
・比定地:東胡の東(山西省代県雁門山の北東)。

 雁門山の北東には漢代に平邑県(比定地:山西省大同市雲州区)、道人県(比定地:山西省大同市陽高県南東部)が置かれていました。
 「岸辺」「森」の解釈で一致しています。

●縄文語:平邑(県)=「ペン・ヤー」=「川上の・陸岸」
・上古音:「平」bʰ i̯ĕŋ/b ǐeŋ/bʰ jĕŋ/b ieŋ/b jing
・上古音:「邑」ʔ i̯əp/0 ǐəp/ʔ jəp/ʔ iəp/· jəp

●縄文語:道人(県)=「タン・ニー」=「こちらの・林、森」
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx
・上古音:「人」ȵ i̯ĕn/ȵ ǐen/ȵ jen/n jien/n jin

▼平邑県の比定地の山西省大同市雲州区



■■■ 貊国 ■■■
◇山海経訳「貊国漢水の東北にあり、地は燕に近く、(燕)がこれを滅ぼす」

◎縄文語:貊=「マ」=「奥、山手」
・上古音:「貊」m ăk/m eak/m uăk/m rwak/m rak
・比定地:漢水の東北。

 燕が近く、漢中盆地を流れる漢水の東北にあることはありえません。前後の記述は大桐盆地周辺を指しているので、「貊国」も同様にとらえる方が自然です。もちろん、燕も近くなります。

◎縄文語:漢水=「カン・スィ」=「上にある・穴」
・上古音:「漢」x ɑn/h an/x ɑn/x an/h anh
・上古音:「水」ɕ i̯wər/ɕ ǐwei/ç jued/stʰ jiwer/h rjidx

 と解釈すれば、発音は少々ずれますが、周辺の「上にある湖沼、水辺」の解釈と完全に一致します。

◎縄文語:開題=「カン・トー」=「上にある・湖沼」
◎縄文語:鴈門=「カン・メ」=「上にある・泉」
◎縄文語:高柳=「カン・ラー」=「上にある・低いところ」
●縄文語:広武(県)=「カン・メ」=「上にある・泉or古い川」
●縄文語:原平(県)=「カン・ぺ」=「上にある・水」




■■■ 孟鳥 ■■■
◇山海経訳「孟鳥は貊国の東北にあり、その鳥は文あり。赤・黄・青、東を向いている」

◎縄文語:孟鳥=「マ・テュ」=「奥、山手の・峰」
・上古音:「孟」m ăk/m eak/m uăk/m rwak/m rak
・上古音:「鳥」t -/t iu/t ioɡ/t eəw/t iəgwx
・比定地:貊国の東北。

 隣接する貊国と「マ=奥、山手」で一致しています。

◎縄文語:貊=「マ」=「奥、山手」


■■■ 開明獣 ■■■
◇山海経訳「海内の昆侖の虚は西北にあり、帝の下界の都。昆侖の虚は方八百里、高さ一万仞(じん)。上に木禾(もくか:穀物の一種)あり、長さ五尋、大きさ五つ囲、面に九つの井戸があり、玉で檻(らんかん)をつくる。上に九つの門があり、文字は開明獣がいて、これを守る。<中略>
 開明獣は身が大きく虎に似て、九つの首、みな人面。東を向いて昆侖の上に立つ」

◎縄文語:昆侖=「カン・ラー」=「上にある・低いところ」
・上古音:「昆」k wən/k uən/k uə̂n/k wən/kw ən
・上古音:「侖」l i̯wən/l ǐwən/l juən/l iwən/l jən

◎縄文語:開明獣=「カン・メ・チゥェ」=「上にある・泉の・水脈、水流」
・上古音:「開」kʰ ər/kʰ əi/kʰ ə̂d/kʰ ər/kh əd
・上古音:「明」m i̯ăŋ/m iaŋ/m juăŋ/m iwaŋ/m jiang
・上古音:「獸」ɕ -/ɕ ǐu/ç jŏɡ/stʰ jəw/h rjəgwh

・比定地:孟鳥の東北。

 いたるところで登場する崑崙(昆侖)ですが、同様の地勢に同名が与えられたとすれば、辻褄が合います。日本の地名にも同様の例は無数に存在します。
 ここでは前述の「高柳」と「高所の低地」の意でまったくの同義となり、開明獣の解釈とも一致します。

◎縄文語:高柳=「カン・ラー」=「上にある・低いところ」



■■■ 鳳凰、鸞鳥 ■■■
◇山海経訳「開明の西に鳳凰、鸞鳥がいて、みな蛇を頭にいただき、足には蛇をふみ、胸には赤い蛇をもって守っている」

◎縄文語:鳳凰=「ペンケ」=「川上」
・上古音:「鳳」bʰ i̯ŭm/b ǐwəm/- -/b jwəm/- -
・上古音:「凰」ɡʰ wɑŋ/ɣ uaŋ/- -/ɡ waŋ/- -

◎縄文語:鸞鳥=「ラ・テュ」=「低い・峰」
・上古音:「鸞」bl wɑn/l uan/l uɑn/l wan/bl an
・上古音:「鳥」t -/t iu/t ioɡ/t eəw/t iəgwx

・比定地:開明の西。

 大同盆地には漢代に平城県(比定地:山西省大同市雲州区)、平邑県(比定地:同上)、その東隣に平舒県が置かれています。これらの県は雁門山の北方ですが、いずれも桑干河沿岸で「桑干河の川上」と解釈できます。桑干河は雁門山の西を北流しています。また、西方には中陵県(比定地:山西省朔州市右玉県)が置かれています。
「川上」「低い峰」で解釈が一致しています。

●縄文語:平城(県)=「ペン・チゥ」=「川上の・水流、水脈」
・上古音:「平」bʰ i̯ĕŋ/b ǐeŋ/bʰ jĕŋ/b ieŋ/b jing
・上古音:「城」ȡ i̯ĕŋ/ʑ ǐeŋ/ʑ jeŋ/d jieŋ/d jing

●縄文語:平邑(県)=「ペン・ヤー」=「川上の・岸」
・上古音:「邑」ʔ i̯əp/0 ǐəp/ʔ jəp/ʔ iəp/· jəp

●縄文語:平舒(県)=「ペン・シ」=「川上の・ところ」
・上古音:「舒」ɕ i̯o/ɕ ǐa/ɕ jaɡ/stʰ jaɣ/sth jag

●縄文語:中陵(県)=「テュ・ラー」=「峰の・低いところ」
・上古音:「中」t -/t ǐuŋ/t joŋ/t iəwŋ/t rjəngw
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng

▼山西省大同市雲州区



■■■ 巫彭、巫抵、巫陽、巫履、巫凡、巫相、服常樹、琅玕樹 ■■■
◇山海経訳「開明の東には巫彭、巫抵、巫陽、巫履、巫凡、巫相がいて、窫窳(あつゆ)の尸をかこみ、みな父子の薬をもって、死期がせまるのふせいでいる。窫窳は蛇身人面、弐負の臣が殺したもの。服常樹があり、その上に三つの頭の人がいて、琅玕樹をねらっている」

◎縄文語:巫彭=「メ・パ」=「泉の・上手」
・上古音:「巫」m i̯wo/m ǐwa/m juaɡ/m jwaɣ/m jag
・上古音:「彭」bʰ ăŋ/b eaŋ/bʰ uăŋ/b rwaŋ/b rang

◎縄文語:巫抵=「メ・テュ」=「泉の・峰」
・上古音:「抵」t iər/t iei/t ied/t er/t idx

◎縄文語:巫陽=「メ・ヤー」=「泉の・陸岸」
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang

◎縄文語:巫履=「メ・ラー」=「泉の・低いところ」
・上古音:「履」l i̯ər/l ǐei/l jed/l ier/l jidx

◎縄文語:巫凡=「メ・パ」=「泉の・上手」
・上古音:「凡」bʰ i̯wăm/b ǐwəm/bʰ juăm/b jwam/b jam

◎縄文語:巫相=「メ・シ」=「泉の・山」
・上古音:「相」s i̯aŋ/s ǐaŋ/s jaŋ/s jaŋ/s jangh

◎縄文語:服常=「ペー・クッチャ」=「水辺の・入口」
・上古音:「服」bʰ i̯ŭk/- -/bʰ juə̆k/b jwək/b jək
・上古音:「常」ȡ i̯aŋ/ʑ ǐaŋ/ʑ jaŋ/d jaŋ/d jang

◎縄文語:琅玕=「ラー・カ」=「低いところ・の岸」
・上古音:「琅」l ɑŋ/l aŋ/l ɑŋ/l aŋ/l ang
・上古音:「玕」k ɑn/k an/k ɑn/k an/k an

・比定地:開明の東。

 つまり、「開明=カン・メ=上にある・泉」の東は、「泉の上手の峰裾の低い岸」だということです。繁峙県あたりでしょうか。この繁峙県は「パン・チゥ」=「川下の・水脈、水流」と解釈できるのですが、なぜ「川下」なのかが不明です。もしかすると「ペン=川上」に「繁」が充てられたのかもしれません。



日没する国のエラーコラム
第二百回「山海経の謎を解く!妖怪は日本の神々と同源、縄文語地名に漢字を充てて創作された!~海内北経~」

 今回は海内北経を縄文語解釈します。第百九十七回の特別編から漏れた内容をご紹介します。

■■■ 蛇巫山、西王母、昆侖虚 ■■■
◇山海経訳「蛇巫の山の上に人がいて、杯をもって東に向かって立つ。西王母が几にもたれて勝(かみかざり)と杖をのせている。その南に三羽の鳥がいて、西王母のために食物をはこぶ。昆侖虚の北にあり」
◇山海経訳(西山経)「さらに西へ三百五十里、玉山といい、ここは西王母の住むところ。西王母はその状、人のようで豹の尾、虎の歯でよく嘯(うそぶ)き、おとろの髪に玉の勝(かんざし)をのせ、天の厲(わざわい)と五残(五種類の刑罰)を司る」

 一応、蛇巫山、西王母、昆侖虚を縄文語解釈してみますが、比定地も定かではなく、解釈確度が高いとは言えません。「高所の湖沼」を表現しているのであれば、青海省、崑崙山脈周辺、チベット高原あたりでしょうか。このあたりも犬戎の活動域です。

◎縄文語:蛇巫=「タン・メ」=「こちらの・泉」
・上古音:「蛇」d ia/ʎ ǐai/d ja/r ia/r ar
・上古音:「蛇」- -/- -/tʰ ɑ/tʰ a/th ar
・上古音:「蛇」ʰ ia/ȡ iai/- -/- -/d jar
・上古音:「巫」m i̯wo/m ǐwa/m juaɡ/m jwaɣ/m jag

◎縄文語:西王母=「シ・オー・メ」=「山・に群在する・泉」
◎縄文語:西母=「シ・メ」=「山の・泉」
※「西王母」殷墟の甲骨文字では「西母」
・上古音:「西」s iər/s     iei/s     ied/s    er/s      id
・上古音:「王」ɡ i̯waŋ/ɣ ǐwaŋ/ɣ juaŋ/ɣ jwaŋ/gw jang
・上古音:「母」m əɡ/m ə/m uə̩̂ɡ/m əɣ/m əgx

◎縄文語:昆侖=「カン・ラー」=「上にある・低いところ」
・上古音:「昆」k wən/k uən/k uə̂n/k wən/kw ən
・上古音:「侖」l i̯wən/l ǐwən/l juən/l iwən/l jən

▼崑崙山脈周辺




■■■ 大行伯、犬封国、犬戎国、吉量 ■■■
◇山海経訳「人あり、大行伯といい、戈をもつ。その東に犬封国あり、弐負の尸は大行伯の東にあり。犬封国は犬戎国ともいい、その状は犬のよう。ひとりの女子がいまし跪いて、酒食を進めている。文(あや)ある馬がいる。白い縞の身、朱い鬣(たてがみ)、目は黄金のよう。名は吉量。これに乗れば寿命千年という」

◎縄文語:大行伯=「タン・カン・ペ・ケ」=「こちらの・上にある・もの・のところ」
・上古音:「大」tʰ ɑd, dʰ ɑd/d at/dʰ ɑd/d ar/d adh
・上古音:「行」ɡʰ ɑŋ/ɣ aŋ/ɣ ɑŋ/ɡ aŋ/g angh
・上古音:「行」ɡ ăŋ/ɣ eaŋ/ɣ ăŋ/ɡ raŋ/g rangh
・上古音:「伯」p ăk/p eak/p uăk/p rwak/p rak

◎縄文語:犬封=「カン・ペ」=「上にある・もの」
・上古音:「犬」kʰ iwən/kʰ iwan/kʰ iuæn/kʰ ewan/khw ianx
・上古音:「封」p i̯uŋ/p ǐwɔŋ/p juŋ/p jewŋ/p jung

◎縄文語:犬戎=「カン・イ」=「上にある・もの」

・上古音:「戎」ȵ -/ȵ ǐuŋ/ȵ joŋ/n jəwŋ/n jəngw

◎縄文語:吉量=「クッチャ」=「湖沼などの入口」
・上古音:「吉」k i̯ĕt/k ǐet/k jet/k jiet/k jit
・上古音:「量」l i̯aŋ/l ǐaŋ/l jaŋ/l iaŋ/l jang

・犬封国、犬戎国の比定地:陝西省、甘粛省、四川省

  陝西省南西部、甘粛省南部、四川省北部の山塊、秦嶺山脈、岷山山脈周辺に「カン=上にある」の解釈が含まれる県名が集中して存在します。つまり、犬封、犬戎とは「高所=山岳地帯にいる者」という意になります。また、蛮族を治める行政区分として「氐道」がありますが、これは縄文語で「テューテュ=出崎」を指します。

●縄文語:故道(県)=「カン・テュ」=「上にある・峰」
・上古音:「故」k o/k a/k ɑɡ/k aɣ/k agh
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:河池(県)=「カン・テュ」=「上にある・峰」
・上古音:「河」ɡʰ ɑ/ɣ ai/ɣ ɑ/ɡ a/g ar
・上古音:「池」dʰ ia/d ǐai/dʰ ja/d ia/d rjar

●縄文語:嘉陵道=「カン・ラー・テュ」=「上にある・低いところの・峰、岬」
・上古音:「嘉」k a/k eai/k a/k ra/k rar
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:下辨道=「カン・ペン・テュ」=「上にある・川上の・峰」
・上古音:「下」ɡʰ ɔ/ɣ ea/ɣ ăɡ/ɡ raɣ/g ragx
・上古音:「辨」bʰ i̯an/b ǐan/bʰ juan/b iwan/b jianx
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:羌道=「カン・テュ」=「上にある・峰」
・上古音:「羌」kʰ i̯aŋ/kʰ ǐaŋ/kʰ jaŋ/kʰ jaŋ/kh jang
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:甸氐道=「タン・テューテュ」=「こちらの・出崎」
・上古音:「甸」dʰ ien/d ien/dʰ ien/d en/d inh
・上古音:「氐」- -/t ǐei/t jed/t ier/t rjid
・上古音:「氐」t iər/t iei/t ied/t er/t id
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:剛氐道=「カン・テューテュ」=「上にある・出崎」
・上古音:「剛」k ɑŋ/k aŋ/k ɑŋ/k aŋ/k ang
・上古音:「氐」- -/t ǐei/t jed/t ier/t rjid
・上古音:「氐」t iər/t iei/t ied/t er/t id
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:陰平道=「ヤン・ペン・テュ」=「陸岸の・川上の・峰」
・上古音:「陰」ʔ i̯əm/0 ǐəm/ʔ jəm/ʔ iəm/· jəm
・上古音:「平」bʰ i̯ĕŋ/b ǐeŋ/bʰ jĕŋ/b ieŋ/b jing
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:湔氐道=「タン・テューテュ」=「こちらの・出崎」
・上古音:「湔」- -/- -/dzʰ iæn/dz ean/dz ian
・上古音:「湔」ts i̯an/ts ǐan/ts jæn/ts jian/ts janh
・上古音:「氐」- -/t ǐei/t jed/t ier/t rjid
・上古音:「氐」t iər/t iei/t ied/t er/t id
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

▼秦嶺山脈、岷山山脈(漢代の県名の縄文語解釈)


▼秦嶺山脈、岷山山脈周辺



■■■ 鬼国、蜪犬、窮奇 ■■■
◇山海経訳「鬼国は弐負の尸の北にあり、この物は、人面にして一つの目。蜪(とう)犬は犬の如くで青色。人を食い、首から(食い)はじめる。窮奇は状は虎の如く、翼があり、人を食うに首からはじめる。食われるものは神を振りみだしている。蜪犬の北にあり」

◎縄文語:鬼(国)=「キ」=「山」
・上古音:「鬼」k i̯wər/k ǐwəi/k juə̆d/k jiwər/kw jədx

◎縄文語:蜪犬=「トー・カ」=「湖沼・のほとり」
・上古音:「蜪」- -/- -/ dʰ ôɡ/d əw/d əgw
・上古音:「犬」kʰ iwən/kʰ iwan/kʰ iuæn/kʰ ewan/khw ianx

◎縄文語:窮奇(国)=「キ・カ」=「山・のほとり」
・上古音:「窮」ɡʰ -/g ǐuŋ/ɡʰ joŋ/ɡ jəwŋ/g jəngw
・上古音:「奇」ɡʰ ia/g ǐai/ɡʰ ja/ɡ ia/g jar
・上古音:「奇」k ia/k ǐai/k ja/k ia/k jar

 弐負の尸は大行伯の東にあるので、犬戎国と位置が重なります。前項で犬戎国を秦嶺山脈、岷山山脈に比定しているので、その北方に「鬼国」があることになります。
 ちょうど岷山山脈の北方に「鬼国」と同じく「山」と解釈できる「西県(比定地:甘粛省隴南市礼県)」「冀県(比定地:甘粛省天水市甘谷県東部)」が漢代に設置されています。

●縄文語:西(県)=「シ」=「山」
・上古音:「西」s iər/s iei/s ied/s er/s id

●縄文語:冀(県)=「キ」=「山」
・上古音:「冀」k i̯ær/k ǐəi/k jəd/k iər/k jiədh

 また、「蜪」と同じく「湖沼」と解釈できる「豲道県(比定地:甘粛省定西市隴西県)」「襄武県(比定地:同上)」もあります。

●縄文語:豲道(県)=「カン・トー」=「上にある・湖沼」
・上古音:「豲」ɡʰ wɑn/- -/ɣ uɑn/ɡ wan/gw an
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:襄武(県)=「シアン・メ」=「大きな・泉」

・上古音:「襄」sn i̯aŋ/s ǐaŋ/s jaŋ/s jaŋ/sn jang
・上古音:「武」m i̯wo/m ǐwa/m juaɡ/m jwaɣ/m jagx

 また、蜪犬の北には窮奇がありますが、これも「首陽県(比定地:甘粛省定西市渭源県)」と解釈が一致しています。

●縄文語:首陽(県)=「シ・ヤー」=「山の・陸岸」
・上古音:「首」ɕ  -/ɕ ǐu/ç jŏɡ/stʰ jəw/h rjəgwx
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang

▼甘粛省定西市周辺




■■■ 大蠭、朱蛾、蟜、闒非、拠比尸、環狗、祙、戎 ■■■
◇山海経訳「大蠭、その状は蠭(はち)の如く、朱蛾はその状、蛾のよう。はその人となり虎の文あり。脛にふくらはぎあり。窮奇の東にあり。闒非は人面で獣身、青色。拠比尸はその人となり、頸が折れ、神をふりみだし、片手なし。環狗はその人となり、獣の首に人の身。というものは人身で黒い首、従(たて)の目。はその人となり人の首で三つの角」

◎縄文語:大蠭=「タン・ペー」=「こちらの・水」
・上古音:「大」tʰ ɑd/dʰ ɑd/d at/dʰ ɑd/d ar/d adh
・上古音:「蠭」- -/- -/pʰ juŋ/pʰ jewŋ/ph jung

◎縄文語:朱蛾=「チゥ・カ」=「水流、水脈の・ほとり」
・上古音:「朱」ȶ i̯u/ȶ ǐwɔ/ȶ juɡ/t jew/t jug
・上古音:「蛾」ŋ ɑ/ŋ ai/ŋ ɑ/ŋ a/ng ar
・上古音:「蛾」ŋ ia/- -/ŋ ja/- -/ng jarx

◎縄文語:蟜=「キ」=「山」
・上古音:「蟜」- -/- -/ɡʰ jɔ̆ɡ/- -/g jagw
・上古音:「蟜」- -/- -/k jɔ̆ɡɡ/k iawɡ/k jagwx

◎縄文語:闒非=「タン・ペー」=「こちらの・水」
・上古音:「闒」- -/- -/dʰ ɑp/d ap/d ap
・上古音:「非」p i̯wər/p ǐwəi/p juə̆d/p jiwər/p jəd

◎縄文語:拠比=「キ・ペー」=「山の・水」

・上古音:「據」k i̯waɡ/k ǐa/k jaɡ/k jaɣ/k jagh
・上古音:「比」p i̯ər/p ǐei/p jed/p jier/p jidx
・上古音:「比」bʰ i̯ər/b ǐei/bʰ jed/b jier/b jidh

◎縄文語:袜=「メ」=「泉」
・上古音:「襪」- -/m ǐwat /- -/- -/- -

◎縄文語:戎=「ニー」=「森、林」
・上古音:「戎」ȵ -/ȵ ǐuŋ/ȵ joŋ/n jəwŋ/n jəngw

 戎以外は「山の水辺」関連で解釈で一致しています。大蠭、朱蛾、蟜が「窮奇の東」ととれますから、前項で比定した「首陽県(比定地:甘粛省定西市渭源県)」周辺の漢代の県名を探ってみます。
 するとすぐ東隣に顕親県(比定地:甘粛省天水市秦安県)、略陽道(比定地:同上)で「水辺」の解釈の一致を発見できます。

●縄文語:顕親(県)=「シアン・チゥ」=「大きな・水流、水脈」
・上古音:「顯」x ian/h ian/x iæn/x ean/h ianx
・上古音:「親」tsʰ i̯ĕn/tsʰ ǐen/tsʰ jen/tsʰ jien/tsh jin

●縄文語:略陽道=「ラケ・ヤン・テュ」=「低いところの・陸岸にある・峰」
・上古音:「略」ɡl i̯ak/l ǐak/l jak/l iak/gl jak
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx


▼甘粛省天水市秦安県




日没する国のエラーコラム
第二百一回「山海経の謎を解く!妖怪は日本の神々と同源、縄文語地名に漢字を充てて創作された!~海内東経~」
 今回は海内東経を縄文語解釈します。

■■■ 雷澤、雷神 ■■■
◇山海経訳「雷澤の中に雷神あり、龍身で人頭、その腹をたたく。呉の西にあり」

◎縄文語:雷=「ラー」=「低地」
・上古音:「雷」l wər/l uəi/l uə̂d/l wər/l əd
・上古音:「澤」dʰ ăk/d eak/dʰ ăk/d rak/d rak

◎縄文語:雷神=「ラー・チゥェ」=「低地の・水流、水脈」
・上古音:「神」ʰ i̯ĕn/ȡ ǐen/ȡʰ jen/zd jien/d jin
・比定地:山東省菏沢市鄄城県。

 この一帯(雷澤=雷夏澤周辺)は「低地」の解釈の漢代の県名が豊富にあります。以下は菏沢市鄄城県、牡丹区(鄄城県の西南に隣接)の県名です。

●縄文語:都関(県)=「トー・カ」=「湖沼の・ほとり」
・上古音:「都」t o/t a/t ɑɡ/t aɣ/t ag
・上古音:「」k wan/k oan/k uan/k rwan/kw ran
・比定地:山東省菏沢市鄄城県。

●縄文語:成陽(県)=「チゥ・ヤー」=「水流、水脈の・陸岸」
・上古音:「成」ȡ i̯ĕŋ/ʑ ǐeŋ/ʑ jeŋ/d jieŋ/d jing
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang
・比定地:現在の山東省菏沢市牡丹区。鄄城県の西南に隣接。

●縄文語:離狐(県)=「ラー・カ」=「低いところの・ほとり」
・上古音:「離」l ia/l ǐai/l ja/l ia/l jiarh
・上古音:「狐」ɡʰ wo/ɣ a/ɣ uɑɡ/ɡ waɣ/gw ag
・比定地:現在の山東省菏沢市牡丹区。鄄城県の西南に隣接。

●縄文語:句陽(県)=「コッ・ヤー」=「窪地、谷、沢の・陸岸」
・上古音:「句」k u/k ɔ/k ûɡ/k ew/k ugh
・上古音:「陽」d i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/d jaŋ/r iaŋ/r ang
・比定地:現在の山東省菏沢市牡丹区。鄄城県の西南に隣接。

●縄文語:葭密(県)=「コッ・マーテュ」=「窪地の・波打ち際」
・上古音:「葭」k ɔ/k ea/k ăɡ/k raɣ/k rag
・上古音:「密」m i̯ĕt/m ǐet/m juət/m iet, m iwət/m jit
・比定地:現在の山東省菏沢市牡丹区。鄄城県の西南に隣接。

●縄文語:呂都(県)=「ラ・トー」=「低い・湖」
・上古音:「呂」ɡl i̯o/l ǐa/l jaɡ/l iaɣ/gl jagx
・上古音:「都」t o/t a/t ɑɡ/t aɣ/t ag
・比定地:現在の山東省菏沢市牡丹区。鄄城県の西南に隣接。

●縄文語:冤句(県)=「ヤン・コッ」=「陸岸にある・窪地、谷、沢」
・上古音:「冤」ʔ i̯wăn/0 ǐwan/ʔ juăn/ʔ jwan/·w jan
・上古音:「句」k u/k ɔ/k ûɡ/k ew/k ugh
・比定地:現在の山東省菏沢市牡丹区。鄄城県の西南に隣接。

●縄文語:定陶(県)=「タン・トー」=「こちらの・湖沼」
・上古音:「定」dʰ ieŋ/d ieŋ/dʰ ieŋ/d eŋ/d ingh
・上古音:「定」t ieŋ/- -/- -/t eŋ/- -
・上古音:「陶」d -/ʎ ǐu/- -/- -/r iaw
・上古音:「陶」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgw
・比定地:現在の山東省菏沢市定陶区。鄄城県の西南に隣接。

▼雷沢の比定地の山東省菏沢市鄄城県周辺(漢代の県名の縄文語解釈)


▼雷沢の比定地の山東省菏沢市鄄城県



■■■ 琅邪臺 ■■■
◇山海経訳「琅邪臺は渤海のほとり。琅邪の東にあり」

◎縄文語:琅邪臺=「ラン・チゥ・チャ」=「上から下へくだる・水脈、水流の・岸」
◎縄文語:琅邪
=「ラン・ヤー」=「上から下へくだる・陸岸」
or「ラン・チゥ」=「上から下へくだる・水脈、水流」
・上古音:「琅」l ɑŋ/l aŋ/l ɑŋ/l aŋ/l ang
・上古音:「邪」z i̯ɔ/ʎ ia/ɡ jăɡ/ɣr aɣ/g rjiag
・上古音:「邪」dz i̯ɔ/z ia/z jăɡ/r jiaɣ/sg jiag
・上古音:「臺」dʰ əɡ/d ə/dʰ ə̂ɡ/d əɣ/d əg
・比定地:現在の山東省青島市黄島区。

▼琅琊台風景区



■■■ 都州、韓鴈、始鳩、轅厲 ■■■
◇山海経訳「都州は海中にあり。<中略>韓鴈は海中にあり。都州の南。始鳩は海中にあり。轅厲(韓鴈)の南」

◎縄文語:都州=「トー・チャ」=「海or湖沼の・岸」
・上古音:「都」t o/t a/t ɑɡ/t aɣ/t ag
・上古音:「州」tɕ /ȶ ǐ u/ȶ jŏ ɡ/t jəw/t jəgw

◎縄文語:韓鴈=「コッ・カ」=「窪地の・ほとり、岸」
・上古音:「韓」ɡʰ ɑn/ɣ an/- -/ɡ an/- -
・上古音:「鴈」ŋ an/ŋ ean/ŋ an/ŋ ran/ng ranh

◎縄文語:始鳩=「シアン・コッ」=「大きな・窪地」
・上古音:「始」ɕ i̯əɡ/ɕ ǐə/ɕ jəɡ/stʰ jiəɣ/sth jəgx
・上古音:「鳩」k -/k ǐu/k jŏɡ/k jəw/k jəgw

◎縄文語:轅厲=「ウェン・ラー」=「難所の・低いところ」
・上古音:「轅」ɡ i̯wăn/ɣ ǐwan/ɣ juăn/ɣ jwan/gw jan
・上古音:「厲」l i̯ad/l ǐat/l jæd/l iar/l jadh

・比定地:不明。淮河下流域の湖沼地帯か。

 「低地」の解釈で一致しているので、淮河下流域の湖沼地帯がふさわしく思えます。

▼淮河下流域の湖沼地帯(漢代の県名の縄文語解釈)


▼淮河下流域の湖沼地帯



■■■ 会稽、楚 ■■■
◇山海経訳「会稽山は偉大なるの南にあり」

◎縄文語:会稽=「コッ・ケ」=「窪地の・ところ」
・上古音:「會」ɡʰ wɑd/ɣ uat/ɣ uɑd/ɡ war/gw adh
・上古音:「會」k wɑd/k uat/k uɑd/k war/kw adh
・上古音:「稽」k iər/kʰ iei/kʰ ied/kʰ er/kh idx
・比定地:会稽。

◎縄文語:楚=「チャ」=「川口、湖沼の出口」
・上古音:「楚」tʂʰ i̯o/tʃʰ ǐa/tsʰ aɡ/tsʰ iaɣ/tsh rjagx

▼会稽山



日没する国のエラーコラム
第二百二回「山海経の謎を解く!妖怪は日本の神々と同源、縄文語地名に漢字を充てて創作された!~西山首経~」

 今回は西山首経を縄文語解釈します。

<距離の補正>
 西山首経に登場する山はそれぞれ、「太華の山=華山」「大時の山=太白山」「天帝の山=麦積山」に比定されています。山海経記載の距離は実際の距離とは異なるため、実際の直線距離を山海経本文記載の里程の比率で分割します。西山首経末尾に記載の総括の山数が本文の山数より一つ多くなっていたり、総距離が本文と異なっていたりするので、距離はあくまで目安です。

(1)華山から太白山
・実際の距離:「太華の山(華山)⇔大時の山(太白山)=直線距離約218km」
・山海経の里:「太華の山(華山)⇔大時の山(太白山)=1032里」
⇒山海経の1里=218 km÷1032里=0.21km

(2)太白山から麦積山
・実際の距離:「大時の山(太白山)⇔天帝の山(麦積山)=直線距離約168km」
・山海経の里:「大時の山(太白山)⇔天帝の山(麦積山)=670里」
⇒山海経の1里=168km÷670里=0.25km

※崋山東方の距離は(1)、麦積山から西方の山は(2)を採用して計算します。


▼西山首経東部(漢代の県名の縄文語解釈)




■■■ 錢來の山 ■■■
◇山海経訳「西山経、華山の首(はじめ)は錢來の山といい、頂上には松が多く、ふもとには洗石が多い」

◎縄文語:錢來=「テュ・ラン・イ」=「峰が・上から下に下る・ところ」
・上古音:「錢」dzʰ i̯an/dz ǐan/dzʰ jæn/dz jian/dz jan
・上古音:「錢」 ts i̯an/ts ǐan/ts jæn/ts jian/ts janx
・上古音:「來」l əɡ/l ə/l ə̂ɡ/l əɣ/l əg
・上古音:「之」ȶ i̯əɡ/ȶ ǐə/ȶ jəɡ/t jiəɣ/t jəg
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/- -/s rian/s rian
・距離補正:「太華の山=華山」の東方【「山海経記載105里」×0.21=28.4 km】の山

 近隣の漢代の県名に、盧氏県(比定地:河南省三門峡市盧氏県)。地勢も解釈も一致しています。

●縄文語:盧氏(県)=「ラン・テュ」=「上から下に下る・峰」
・上古音:「盧」l o/l a/l ɑɡ/l aɣ/l ag
・上古音:「氏」ȡ i̯ĕɡ/ȶ ǐe/j jeɡ/d jieɣ/g rjigx



■■■ 錢來の山/羬羊 ■■■
◇山海経訳「獣がいる。その状は羊の如くで馬の尾。名は羬羊(大羊)。その脂は腊(せき:ひび)をいやすによろし」

◎縄文語:羬羊=「カン・ヤー」=「上にある・陸岸」
・上古音:「咸」ɡʰ æm/ɣ eəm/ɣ əm/ɡ rəm/g rəm
・上古音:「羊」z i̯aŋ/ʎ ǐaŋ/ɡ jaŋ/ɣr iaŋ/r ang

 縄文語解釈と地勢が完全に一致しています。
 近隣の漢代の県名に弘農県(比定地:河南省三門峡市霊宝市)。「高所」の意で一致しています。

●縄文語:弘農(県)=「カン・ノッ」=「上にある・岬」
・上古音:「弘」ɡʰ wəŋ/ɣ uəŋ/ɣ uə̂ŋ/ɡ wəŋ/gw əng
・上古音:「農」n -/n uŋ/n ôŋ/n əwŋ/n əngw



■■■ 松果の山 ■■■
◇山海経訳「西へ四十五里。松果の山といい、濩水ながれ北流して渭水に注ぐ。水中に銅が多い」

◎縄文語:松果=「チゥ・カ」=「水流、水脈・のほとり」
・上古音:「松」dz i̯uŋ/z ǐwɔŋ/z juŋ/r jewŋ/sg jung
・上古音:「果」 kl wɑr/k uai/k uɑ/k wa/kw arx
・上古音:「之」 ȶ i̯əɡ/ȶ ǐə/ȶ jəɡ/t jiəɣ/t jəg
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/- -/s rian/s rian
・距離補正:「太華の山=華山」の東方【「山海経記載60里」×0.21=12.6 km】の山

 縄文語解釈と地勢が完全に一致しています。
 近隣の漢代の県名に胡県(湖県)(比定地:河南省三門峡市霊宝市)。「水辺」の意で一致しています。

●縄文語:胡(湖)(県)=「コッ」=「谷、窪地、沢」
・上古音:「胡」ɡʰ o/ɣ a/ɣ ɑɡ/ɡ aɣ/g ag
・上古音:「湖」ɡʰ o/ɣ a/ɣ ɑɡ/ɡ aɣ/g ag



■■■ 松果の山/䳋渠 ■■■
◇山海経訳「鳥がいる。その名は䳋渠。その状は山雉の如く、黒い身、赤い脚、𦢊(はく:あかぎれ)をいやすによろし」

◎縄文語:䳋渠=「テュー・カ」=「峰、岬の・のほとり」
・上古音:「鳥」t /t iu/t ioɡ/t eəw/t iəgwx
・上古音:「渠」- ɡʰ i̯o/g ǐa/ɡʰ jaɡ/ɡ jaɣ/g jag

 縄文語解釈と地勢が完全に一致しています。
 近隣の漢代の県名に弘農県(比定地:河南省三門峡市霊宝市)。「岬」の意で一致しています。

●縄文語:弘農(県)=「カン・ノッ」=「上にある・岬」
・上古音:「弘」ɡʰ wəŋ/ɣ uəŋ/ɣ uə̂ŋ/ɡ wəŋ/gw əng
・上古音:「農」n -/n uŋ/n ôŋ/n əwŋ/n əngw



■■■ 太華の山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ六十里。太華の山(西嶽)といい、削りあげたようで四角。その高さは五千仞。その広さは十里。鳥獣住むことなし」

◎縄文語:太華
=「タ・コッ」=「石の・谷」
or「タ・カ」=「石の・ほとり」

・上古音:「太」tʰ ɑd/tʰ at/- -/tʰ ar/- -
・上古音:「華」ɡʰ wɔ/ɣ oa/ɣ uăɡ/ɡ rwaɣ/gw ragh
・上古音:「華」- -/h oa/x uăɡ/x rwaɣ/hw rag
・場所:現在の陝西省渭南市華陰県の西岳華山

 「石の谷」「石のほとり」の縄文語解釈と地勢が完全に一致しています。

▼西岳華山



■■■ 太華の山/肥𧔥 ■■■
◇山海経訳「蛇がいる。名は肥𧔥。六つの足。四つの翼。これが現れると天下おおいに旱する」

◎縄文語:肥𧔥=「ピ・イェー」=「石・石」
・上古音:「肥」bʰ i̯wər/b ǐwəi/bʰ juə̆d/b jiwər/b jəd
・上古音:「遺」ɡ i̯wæd/ʎ ǐwəi/ɡ juəd/ɣr iwər/gw rjəd
・上古音:「遺」- -/ʎ ǐwəi/ɡ juəd/- -/gw rjədh

 「石の谷」である華山の縄文語解釈と地勢が完全に一致しています。



■■■ 小華の山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ八十里、小華の山といい、山の木には茨・杞が多く、獣には㸲牛(さくぎゅう:野牛)が多い」

◎縄文語:小華=「シ・カ」=「山のほとり」
・上古音:「小」s i̯oɡ/s ǐau/s jɔɡ/s jiaw/s jagwx
・上古音:「華」ɡʰ wɔ/ɣ oa/ɣ uăɡ/ɡ rwaɣ/gw ragh
・上古音:「華」- -/h oa/x uăɡ/x rwaɣ/hw rag
・距離補正:「太華の山=華山」の西方【「山海経記載80里」×0.21=16.8 km】の山



■■■ 符禺の山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ八十里、符禺の山といい、山の南には銅が多く、北には、鉄が多い。<中略>符禺の水ながれて北流して渭に注ぐ」

◎縄文語:符禺=「ペン・キ」=「川上の・山」
・上古音:「符」bʰ i̯u/b ǐwɔ/bʰ juɡ/b jew/b jug
・上古音:「禺」ŋ i̯u/ŋ ǐwɔ/ŋ juɡ/ŋ jew/ng jug
・上古音:「禺」ŋ i̯u/- -/ŋ juɡ/ŋ jew/ng jugh
・距離補正:「太華の山=華山」の西方【「山海経記載160里」×0.21=33.6 km】の山



■■■ 符禺の山/葱聾 ■■■
◇山海経訳「獣には葱聾が多く、その状は羊の如くで赤い鬣(たてがみ)」

◎縄文語:葱聾=「テュ・ラー」=「峰の・低いところ」
・上古音:「葱」tsʰ uŋ/tsʰ ɔŋ/tsʰ ûŋ/tsʰ ewŋ/tsh ung
・上古音:「聾」l uŋ/l ɔŋ/l ûŋ/l ewŋ/l ung

 縄文語解釈と地勢が完全に一致しています。
 近隣の漢代の県名に蓮勺県、藍田県(比定地:陝西省西安市藍田県)。「低山」の意で一致しています。

●縄文語:蓮勺(県)=「ラン・テュ」=「上から下に下がる・小山」
・上古音:「蓮」l i̯an/l ian/l iæn/l ean/l ian
・上古音:「勺」 ȶ i̯ok/- -/ȶ jɔk/t jawk/t jakw
・上古音:「勺」 ȡ i̯ok/ʑ ǐauk/ʑ jɔk/d jawk/d jakw

●縄文語:藍田(県)=「ラ・テュ」=「低い・峰」
・上古音:「藍」ɡl ɑm/l am/l ɑm/l am/gl am
・上古音:「田」dʰ ien/d ien/dʰ ien/d en/d in



■■■ 符禺の山/ ■■■
◇山海経訳「鳥にはが多く、その状は翠(かわせみ)の如くで赤い喙(くちさき)。これを飼うと火をふせぐによろし」

◎縄文語:鴖=「メ」=「泉」
・上古音:「民」m i̯ən, i̯ĕn/m ǐen/m jen/m jien/m jiən, jin

 比定地の漢代の県名に武城県(比定地:陝西省渭南市華州区)。「泉」の意で一致しています。

●縄文語:武城(県)=「メ・チャ」=「泉の・岸」
・上古音:「武」m i̯wo/m ǐwa/m juaɡ/m jwaɣ/m jagx
・上古音:「城」ȡ i̯ĕŋ/ʑ ǐeŋ/ʑ jeŋ/d jieŋ/d jing



■■■ 石脆の山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ六十里、石脆の山といい、山の木には椶樹(しゅろのき)が多い」

◎縄文語:石脆=「テュ・テュ」=「小山の・峰」
・上古音:「石」ȡ i̯ăk/ʑ iak/- -/d jiak/d jiak
・上古音:「脆」tsʰ i̯wad/tsʰ ǐwat/tsʰ juæd/tsʰ jiwar/tsh juadh
・距離補正:「太華の山=華山」の西方【「山海経記載220里」×0.21=46.2 km】の山

 地勢と完全に一致しています。
 近隣の漢代の県名に蓮勺県(比定地:陝西省渭南市臨渭区)、藍田県(比定地:陝西省西安市藍田県)。「低山」の意で一致しています。

●縄文語:蓮勺(県)=「ラン・テュ」=「上から下に下がる・小山」
・上古音:「蓮」l i̯an/l ian/l iæn/l ean/l ian
・上古音:「勺」 ȶ i̯ok/- -/ȶ jɔk/t jawk/t jakw
・上古音:「勺」 ȡ i̯ok/ʑ ǐauk/ʑ jɔk/d jawk/d jakw

●縄文語:藍田(県)=「ラ・テュ」=「低い・峰」
・上古音:「藍」ɡl ɑm/l am/l ɑm/l am/gl am
・上古音:「田」dʰ ien/d ien/dʰ ien/d en/d in



■■■ 英山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ七十里、英山といい、頂上には杻(ちゅう:もちのき)・橿(きょう:かしのき)が多く、山の北には鉄が多く、南には赤金が多い」

◎縄文語:英山=「エン・サン」=「突き出た、尖った・出崎」
・上古音:「英」ʔ i̯ăŋ/0 iaŋ/ʔ jăŋ/ʔ iaŋ/· jiang
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian
・距離補正:「太華の山=華山」の西方【「山海経記載290里」×0.21=60.9km】の山

 崋山からの距離を目安にすると、王順山国家森林公園(華山からの直線距離約70km)あたりでしょうか。

⇒王順山国家森林公園(google画像検索)



■■■ 英山/䰷魚 ■■■
◇山海経訳「禺水ながれて北流し招水に注ぐ。水中に䰷魚が多く、その状は鼈(すっぽん)の如く、その声は羊のよう。<中略>鳥がいる。その状は鶉の如く、黄色い身で赤い喙。その名は肥遺

◎縄文語:䰷魚=「ピ・キ」=「石の・山」
・上古音:「丰」pʰ i̯uŋ/pʰ ǐwɔŋ/pʰ juŋ/pʰ jewŋ/ph jung
・上古音:「魚」ŋ i̯o/ŋ ǐa/ŋ jaɡ/ŋ jaɣ/ng jag

◎縄文語:肥遺=「ピ・イェー」=「石・石」
・上古音:「肥」bʰ i̯wər/b ǐwəi/bʰ juə̆d/b jiwər/b jəd

・上古音:「遺」ɡ i̯wæd/ʎ ǐwəi/ɡ juəd/ɣr iwər/gw rjəd
・上古音:「遺」- -/ʎ ǐwəi/ɡ juəd/- -/gw rjədh



■■■ 竹山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ五十二里、竹山といい、頂上には高い木が多く、山の北には鉄が多い」

◎縄文語:竹山=「テュ・サン」=「小山の・出崎」
・上古音:「竹」t -/t ǐuk/t jok/t iəwk/t rjəkw
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/- -/s rian/s rian
・距離補正:「太華の山=華山」の西方【「山海経記載342里」×0.21=71.8 km】の山

 西安市南部の丘陵地帯とすれば地勢が完全に一致しています。
 近隣の漢代の県名に藍田県(比定地:陝西省西安市藍田県)。「低山」の意で一致しています。

●縄文語:藍田(県)=「ラ・テュ」=「低い・峰」
・上古音:「藍」ɡl ɑm/l am/l ɑm/l am/gl am
・上古音:「田」dʰ ien/d ien/dʰ ien/d en/d in



■■■ 竹山/豪彘 ■■■
◇山海経訳「獣がいる。その状は豚の如くで白い毛。大きさは笄(かんざし)の如くで毛の端は黒い。名は豪彘

◎縄文語:豪彘=「コッチャ」=「谷の入口」
・上古音:「豪」ɡʰ oɡ/ɣ au/ɣ ɔ̂ɡ/ɡ aw/g agw
・上古音:「彘」dʰ i̯ad/d ǐet/- -/- -/- -

 縄文語解釈と地勢が完全に一致しています。渭水支流の㶚河の谷の入口です。



■■■ 浮山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ百二十里、浮山という。肦(はん)木多く、のこぎり葉であるが傷(とげ)はなく、木の中に虫がいる」

◎縄文語:浮山=「ピ・サン」=「石の・出崎」
・上古音:「浮」bʰ -/b ǐu/bʰ jŏɡ/b jəw/b jəgw
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian
・距離補正:「太華の山=華山」の西方【「山海経記載462里」×0.21=97.02 km】の山

 嘉午台風景区(華山からの直線距離約102 km)とすればピッタリです。

⇒嘉午台風景区(google画像検索)



■■■ 羭次の山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ七十里、羭次の山といい、漆水ながれ北流して渭に注ぐ。頂上には棫(たらのき)・橿(かしのき)が多く、麓には竹・箭が多い。山の北には赤銅多く、南には嬰垣の玉が多い」

◎縄文語:羭次=「テューテュ」=「岬」
・上古音:「羭」d i̯u/- -/- -/r iew/- -
・上古音:「次」tsʰ i̯ər/tsʰ ǐei/tsʰ jed/tsʰ jier/tsh jidh
・距離補正:「大時の山=太白山」の東方【「山海経記載500里」×0.21=105 km】の山


 翠崋山(太白山より直線距離約110km)周辺か。



■■■ 羭次の山/ ■■■
◇山海経訳「獣がいる。その状は禺(さる)の如くで長い臂(かいな)。よく投げる。その名は

◎縄文語:嚻=「シ」=「山」
・上古音:「嚻」x i̯oɡ/h ǐau/x jɔ̆ɡ/x iaw/h jagw



■■■ 羭次の山/橐𩇯 ■■■
◇山海経訳「鳥がいる。その状は梟の如く、人面で一つの足。橐𩇯という。冬にあらわれ、夏はかくれる。(その羽をつけると)雷もこわくない」

◎縄文語:橐𩇯=「タ・ピ」=「石・石」
・上古音:「橐」tʰ ɑk/tʰ ak/tʰ ɑk/tʰ ak/th ak
・上古音:「非」p i̯wər/p ǐwəi/p juə̆d/p jiwər/p jəd

 翠崋山(太白山より直線距離約110km)の形容にピッタリです。

⇒翠崋山(google map)



■■■ 時山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ百五十里、時山といい、草木なし。逐水ながれ、北流して渭に注ぐ。」

◎縄文語:時山=「チン・サン」=「崖の・出崎、平山」
・上古音:「時」ȡ i̯əɡ/ʑ ǐə/ʑ jəɡ/d jiəɣ/d jəg
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian
・距離補正:「大時の山=太白山」の東方【「山海経記載350里」×0.21=73.5 km】の山

 太白山から直線距離で約82kmの太平国家森林公園とすればピッタリです。

⇒太平国家森林公園(google map)



■■■ 南山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ百七十里、南山といい、頂上には丹粟(たんしゃ)が多い。丹水がながれ北流して渭に注ぐ。」

◎縄文語:南山=不明
・上古音:「南」n əm/n əm/n ə̂m/n əm/n əm
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian
・距離補正:「大時の山=太白山」の東方【「山海経記載180里」×0.21=37.8 km】の山

▼太白山



■■■ 大時の山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ百八十里。大時の山といい、頂上には穀(こうぞ)、柞(ははそ)が多く、麓には杻・橿が多い。北には銀が多く、南には白玉が多い。涔水(しんすい)ながれ北流して渭に注ぐ。清水ながれ南流して漢水に注ぐ」

◎縄文語:大時=「タン・チン」=「こちらの・崖」
・上古音:「大」tʰ ɑd, dʰ ɑd/d at/dʰ ɑd/d ar/d adh
・上古音:「時」ȡ i̯əɡ/ʑ ǐə/ʑ jəɡ/d jiəɣ/d jəg
・場所:現在の宝鶏市太白県太白山

 縄文語解釈と地勢が完全に一致しています。

●縄文語:太白=「タン・パケ」=「こちらの・岬」
・上古音:「太」tʰ ɑd/tʰ at/- -/tʰ ar/- -
・上古音:「白」bʰ ăk/b eak/bʰ uăk/b rwak/b rak

▼西山首経西部(漢代の県名の縄文語解釈)




■■■ 嶓冢の山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ三百二十里。嶓冢の山といい、漢水ながれて東南流し、沔江(べんこう)に注ぐ。嚻水ながれ北流して湯水に注ぐ」

◎縄文語:嶓冢=「パン・テュ」=「川下の・峰」
・上古音:「幡」pʰ i̯wăn/pʰ ǐwan/pʰ juăn/pʰ jwan/ph jan
・上古音:「冢」t i̯uŋ/t ǐwɔŋ/t juŋ/t iewŋ/t rjungx
・距離補正:「大時の山=太白山」の西方【「山海経記載320里」×0.25=80.0 km】の山



■■■ 天帝の山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ三百五十里。天帝の山といい、頂上には椶(しゅろ)、枏(くすのき)が多く、麓には菅、蕙(けい:かおりぐさ)が多い」

◎縄文語:天帝=「タン・テュ」=「こちらの・峰」
・上古音:「天」tʰ ien/tʰ ien/tʰ ien/tʰ en/th in
・上古音:「帝」t ieɡ/t ie/t ieɡ/t eɣ/t igh
・場所:現在の麦積山

◎縄文語:麦積=「マ・テュ」=「奥の・小山」
・上古音:「麥」m wæk/m eək/m uək/m rwək/m rək
・上古音:「積」ts i̯ĕɡ/ts ǐe/ts jeɡ/ts jieɣ/ts jigh
・上古音:「積」ts i̯ĕk/ts ǐek/ts jek/ts jiek/ts jik



■■■ 皐塗の山 ■■■
◇山海経訳「西南へ三百八十里、皐塗の山といい、薔水ながれ西流して、諸資の水に注ぐ。塗水ながれ南流して集獲の水に注ぐ」

◎縄文語:皐塗=「カン・テュ」=「上にある・峰」
・上古音:「皋」k -/k u/k ôɡ/k əw/k əgw
・上古音:「塗」dʰ o/d a/- -/d aɣ/- -
・距離補正:「天帝の山=麦積山」の西南方【「山海経記載380里」×0.25=95.0 km】の山

 近隣の漢代の県名に嘉陵道(比定地:甘粛省隴南市礼県雷壩鎮)、下辨道(比定地:甘粛省隴南市成県)、河池県(比定地:甘粛省隴南市徽県)、故道県(比定地:陝西省宝鶏市鳳県)があり、「上にある峰」の意で一致しています。

●縄文語:嘉陵道=「カン・ラー・テュ」=「上にある・低い・峰、岬」
・上古音:「嘉」k a/k eai/k a/k ra/k rar
・上古音:「陵」l i̯əŋ/l ǐəŋ/l jəŋ/l iəŋ/l jəng
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:下辨道=「カン・ペン・テュ」=「上にある・川上の・峰」
・上古音:「下」ɡʰ ɔ/ɣ ea/ɣ ăɡ/ɡ raɣ/g ragx
・上古音:「辨」bʰ i̯an/b ǐan/bʰ juan/b iwan/b jianx
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx

●縄文語:河池(県)=「カン・テュ」=「上にある・峰」
・上古音:「河」ɡʰ ɑ/ɣ ai/ɣ ɑ/ɡ a/g ar
・上古音:「池」dʰ ia/d ǐai/dʰ ja/d ia/d rjar

●縄文語:故道(県)=「カン・テュ」=「上にある・峰」
・上古音:「故」k o/k a/k ɑɡ/k aɣ/k agh
・上古音:「道」dʰ -/d u/dʰ ôɡ/d əw/d əgwx



■■■ 皐塗の山/𤣎如 ■■■
◇山海経訳「獣がいる。その状は鹿の如くで白い尾、馬の足、人の手、四つの角、名は𤣎如

◎縄文語:𤣎如=「エエニ」=「尖り山」
・上古音:「嬰」ʔ i̯ĕŋ/0 ǐeŋ/ʔ jeŋ/ʔ jieŋ/· jing
・上古音:「如」ȵ i̯o/ȵ ǐa/ȵ jaɡ/n jaɣ/n jag



■■■ 皐塗の山/数斯 ■■■
◇山海経訳「鳥がいる。その状は鴟のごとくで人の足。名は数斯。これを食うと癭(えい:首のこぶ)によろし」

◎縄文語:𤣎如=「シ・シ」=「大きな・山」
・上古音:「數」sl i̯u/ʃ ǐwɔ/s uɡ/s iew/sl jugh
・上古音:「數」s ŭk/ʃ eɔk/s uk/s rewk/sl uk
・上古音:「斯」s i̯ĕɡ/s ǐe/s jeɡ/s jieɣ/s jig



■■■ 黄山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ百八十里。黄山といい、草木なく竹、箭が多い。肦水ながれ西流して赤水に注ぐ。水中に玉が多い」

◎縄文語:皐塗=「コッ・サン」=「谷の・出崎」
・上古音:「黄」ɡʰ wɑŋ/ɣ uaŋ/ɣ uɑŋ/ɡ waŋ/gw ang
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian
・距離補正:「天帝の山=麦積山」の西南西方【「山海経記載860里」×0.25=215.0 km】の山



■■■ 翠山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ二百里、翠山といい、頂上には椶(しゅろ)・枏(くすのき)、麓には竹・箭が多い。山の南には黄金・玉が多く、北には旄牛(ぼうぎゅう:からうし)、レイ(かもしか)・麝(じゃこうじか)が多い」

◎縄文語:翠山=「テュィ・サン」=「くずれる・出崎」
・上古音:「翠」  tsʰ i̯wəd/tsʰ ǐwəi/tsʰ juəd/tsʰ jiwər/tsh jədh
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian
・距離補正:「天帝の山=麦積山」の西南西方【「山海経記載1060里」×0.25=265.0 km】の山



■■■ 翠山/ ■■■
◇山海経訳「鸓(るい:むささび)が多く、その状は鵲の如く、赤黒くて二つの首、四つの足、火をふせぐによろし」

◎縄文語:翠山=「ルー」=「道」
・上古音:「鸓」- -/- -/l juəd/l iwər/l jədx



■■■ 騩山 ■■■
◇山海経訳「さらに西へ二百五十里、騩山といい、これが西海にさかいする。草木なくて玉が多い。凄水ながれ西流して海に注ぐ。山には采石(いろいし)・黄金が多く、丹粟が多い」

◎縄文語:騩山=「ケィ・サン」=「死体、骨の・出崎」
・上古音:「騩」- -/- -/k juəd/k iwər/kw jiədh
・上古音:「山」s ăn/ʃ ean/-/s rian/s rian
・距離補正:「天帝の山=麦積山」の西南西方【「山海経記載1310里」×0.25=327.5 km】の山



◎参考文献: 『地名アイヌ語小辞典』(知里真志保著、北海道出版企画センター)※参考文献を基に、筆者自身の独自解釈を加えています。/『山海経』(高馬三良訳 平凡社)『日本書紀 全現代語訳』(宇治谷孟 講談社学術文庫)/『古事記 全訳注』(次田真幸 講談社学術文庫)/『風土記』(中村啓信 監修訳注 角川ソフィア文庫)/『古語拾遺』(西宮一民校注 岩波文庫)/『日本の古代遺跡』(保育社)/wikipedia/地方自治体公式サイト/ほか

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